顔面麻痺




男女差、年齢層に関係なく、突然始まる片側顔面筋の運動麻痺が主な症状です。その結果、額にしわを寄せられない、眼を閉じられない、口角が垂れ下がる、口を尖(とが)らせて口笛がふけなくなる、口角からよだれが垂れる、などの症状が起こります
麻痺側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることがあります。
麻痺側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うことがあります。典型的な訴えとしては、ものを食べた時、金属を口に入れたような感じがするというものです。
眼が閉じにくいため、眼を涙で潤(うるお)すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなります。そのため、角膜に潰瘍ができることがあります。
比較的予後は良好で、数カ月で自然治癒することもあります。
治癒が完全でない場合には、顔面麻痺が残ることがあります。また再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると眼が一緒に閉じたり、熱いものや冷たいものを食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。



顔面神経麻痺の主な後遺症
 
顔面神経麻痺の予後は、障害の程度や範囲、病因、治療法、治療開始時期などによって様々です。臨床において最も頻度の高いベル麻痺(Bell's Palsy)やラムゼイ・ハント症候群(Ramsay-Hunt Syndrome)などの場合は、神経障害が軽度であれば、適度な治療によりほとんど後遺症を残さず回復しますが、神経障害が重度の場合はしばしば後遺症を残します。顔面神経麻痺の後遺症は色々ありますが、主な後遺症は下記の症状で神経の再生不良が原因です。

@病的共同運動 (Synkinesis)
何らかの原因で、顔面神経が再生される(1日1-2mm)うえで神経が交差、又は本来と違う場所に再生してしまったために起こる障害です。顔面の運動神経は末端で6千本ぐらい細かく顔の隅々まで分布してますが、とても細かいがゆえに、ばらばらに再生することがあります。例えば、目のまばたきを担当する筋肉に行く神経が口の周囲の開け閉めに使う口輪筋に再生してしまい、口の開閉に伴い目が動くという共同運動が起こったりします。ですので、食事をするときなど、目が一緒に動いたりします。病的共同運動は、顔面神経麻痺の後遺症のなかで最も頻度の高い後遺症です。病的共同運動は、顔面神経が再生し、まったく動かなかった顔面筋が動くようになるころ、発症してから3〜4ヶ月ころに出現します。

Aワニの涙
食事などをする際、多量の涙が麻痺側の目からでます。ワニは食べ物を食べると涙が出るといわれてますので「ワニの涙」と呼んでます。これは唾液腺と涙腺を担当する神経が再生の過程で混同することによっておこります。

B顔面拘縮
麻痺側の顔面が、安静時も非対称に見え、顔面筋のこわばりが残ります。また、時によっては目の周りや顔面の筋肉が痙攣したりすることもあります。また、ストレスなどによって、治癒したはずの顔面が突如としてピクピク自分の意思と関係なく動くこともあります。特に口の周り、まぶたの下、ほっぺたの辺りにおこりやすいです。

Cアブミ骨筋性耳鳴
一過性の難聴や耳鳴りが目を閉じたり、口を動かしたりした時に起こります。これは本来表情筋を動かす神経線維が誤ってアブミ骨筋(鼓膜に伝わってきた振動を増強して内耳に伝える筋肉)に再生したために発生します。