社会復帰

2000年

7月1日(土)

この日から仕事開始です。

退院してからの1ヵ月に就職活動をしていた訳ではありません。入院前から働いていた歯科医院に戻ったのです。歯科は一般企業とは違ってほとんどが個人経営なので病気だからといって一ヶ月も二ヶ月も休んでしまったら仕事になりません。

もうそこに何年も勤めていた私は迷惑がかかってしまうことは分かっていたし顔面麻痺などが出てしまったら人前に出る仕事なんて出来ないと思い病気が分かった時点で辞めることを歯科の先生に伝えました。そのとき先生は「二ヶ月くらいなら代わりの人を雇うし、顔だってマスクで隠れて分からないよ。帰ってきなよ」と言ってくれました。“顔がゆがんでしまったらマスクでは隠しきれないんだろうな”と思っていましたが、それ以上断る理由がありませんでした。私は周りの環境に恵まれたなと嬉しくて泣きそうになりました。

手術も成功していざ働くことになりました。健康な時に三年以上働いていたところですが2ヶ月も何もしていない状態からのスタートです。思った以上に体が動かなくて戸惑いました。ジレンマもありました。日大のある先生が「バリバリ働いていた人が入院すると、今までは100%仕事が出来ていたのが60%しかできなくなっていて悲観するけれど手術をしたんだし最初から100%のことが出来ないのは当然のこと。60%の所から徐々に元にもどして行けばいいんだよ。」と言っていたのを思い出しました。そういえばそうだなと思い直しもどかしさを抑えつつ出来る事からやっていきました。もちろんまわりの方々の理解もあったおかげで徐々に普段の生活に戻ることが出来ました。

仕事面でも生活面でも前のように戻れたなと思えたのは手術から半年後のことでした。
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